日常を返せ!
「なんだ、どうしたんだ?」

「お願い、助けてください! わたしたち、誘拐されて逃げて来たんです‼︎」

「は? 誘拐?」

 田山の言葉に運転手は首を傾げる。

「少し離れた場所に怪我人もいるんです。警察と救急車を呼んでくれませんか?」

 わたしが来た方を指差して必死に説明をすると、運転手は少し唸った後に隣の助手席に視線を向けた。

「どんな状況か分からないから、とりあえず案内してくれないか? あんたたちの様子を見ても、嘘を言っているようには見えないからな」

「分かりました。ありがとうございます」

「やったわね、新田さん」

「うん!」

 わたしと田山は顔を見合わせて手を取り、助けてもらえる相手に出会えたことを喜んだ。

 運転手に頭を下げてから、助手席に乗せてもらうと、先程より遅い速度でトラックが走り出した。

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