日常を返せ!
「どうした、羽間と新田だったよな?」

「はい、新田さん。わたしたちに用なの?」

「実はわたしたち早退しようと思って連絡しに来ました」

「どこか具合でも悪いのか?」

「昨日の今日で体が本調子ではないことと、学校のどこへ行っても、色んな人から質問攻めにされて、事件のことを思い出してしまって……」

 そう言って、薄っすらと涙を溜める羽間に二人の教師は驚いた顔を見せる。

「あいつら、あれだけ詮索するなと言っていたのに、もう一度全校集会を開いて説教しないといけないな」

「まあまあ、他の子たちも自分もターゲットにされるかもしれないと、恐れて聞いたと思いますよ。ですから、穏便にしましょう」

 眉間に皺を寄せている壇先生に、佐藤先生が優しく宥める。

「あの、わたしたちは早退してもよろしいですか?」

「ああ、体調不良で早退させる。新田もそれでいいな」

 壇先生の言葉に小さく頷くと、佐藤先生が心配そうにわたしの顔を覗き込む。

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