日常を返せ!
 みんなが口々に犯人の悪口を言う。

 こっちは被害者なんだから、これくらい言ってもいいだろう。

「もう、そんな暗い話はなしなし! じゃあ、トップバッターいきまーす♪」

 石井がマイク越しの声で事件の話をかき消し、流行りの曲を流して歌い始めた。

 それからはそれぞれが好きな曲を歌い、時間はあっという間に過ぎた。

 カラオケ店を出たのは十九時を過ぎていた。

 全員ストレス発散出来たのか、晴れやかな顔をしている。

「あー楽しかった。またやろうね」

「今度は怪我が治ったらボーリング行きてぇな」

「それなら早く治してね」

「無茶言うなよ」

 田山と玉木のやりとりをクスリと笑うと、植本がパンッと手を叩いた。

「そろそろ帰りましょうか。僕、玉木さんと帰り道が同じなので彼を連れて帰ります」

「俺はルリカと同じとこに住んでるから、一緒に帰るわ」

< 79 / 296 >

この作品をシェア

pagetop