君との恋はセーブができない.
夢じゃない
一睡も出来なかった。それはもちろん、全部あいつのせい。
朝起きて1番にあいつの顔が浮かんだ。…やっぱり夢かもしれない。そう思ってスマホを開くと、「また明日」という雪斗からのメッセージがあった。
どんな顔して会えばいい?昨日は本気なの?それとも……
「なゆ、どしたその顔」
「ありさ?!」
机をバン、と勢いよく叩き大きな目を見開いて見上げる 私の中学の頃からの友達、ありさ。
…ありさなら相談してみてもいいかもしれない。
チラッと横目で雪斗の席を見て、雪斗がいないことを確信した私は
実はね、と昨日のことを話した。
* * *
「あ、ついに山が動いたってわけね?」
話を聞き終わったありさは、呆気ないような顔で言った。
「…へ?」
全て知ってますという顔で私に微笑むありさに頭が真っ白になる。
「雪斗くんさぁ、バレバレなのよね」
「バレバレって…?」
そんなの当たり前じゃん、とありさは雪斗の席を見て続ける、
「なゆを好きなのが、よ」
「い、今までそんな素振りなんてなかった…し、わかんないよ」
「でも昨日好きだって言われたんでしょ?」
…確かに言われた。
私と雪斗の間には恋話なんてものは今までなかった。なのに、いきなり…
いつもヘラヘラしてて能天気なあいつが私を好きだなんて、
「だ、だけどやっぱり昨日のやつは冗談っていうか…」
「…本気だって言ってんだろ」
ドンと机に鞄を置く音と、同時に不機嫌そうな雪斗の声。
「本気って、なんで私に…」
今までそんな素振り見せなかったじゃん、彼女がほしいって、好きな人いるって恋愛話もお互いなかったじゃん。動揺する私を置いて雪斗はぶっきらぼうに言う。
「何回言えば気が済むんだよ、俺はなゆが好きだって」
なゆがいいんだよ、
ため息混じりの声と、色素の薄い大きな瞳に吸い込まれそうになる。
「雪斗くん、ずっと好きだったもんね。なゆのこと」
ね?と雪斗を見て言うありさ。私、なにもわからなかったよ。
「あぁ、なゆ。そういうことだから。帰り待ってる」
「え、あ、うん…」
いやどういうこと?
と、突っ込む思考さえ回らなかった。
雪斗が席に戻った瞬間、チャイムが校内に響き渡る。チャイムが煩い、いいや。違う、私が。私の鼓動が煩いのかもしれない。
「なゆ、あんた顔真っ赤だよ」
今まで雪斗を意識したことがない、なんてことはなかった。1度だけ、雪斗には好きな人がいるのか、とか。告白の返事どうしたの?と聞きたいことがあった。
いつも囲まれている女の子の中に好きな人がいるんじゃないか、って
雪斗に彼女ができたら、好きな人ができたら
毎晩一緒にゲームできなくなってしまうのかな?なんて考えたり
雪斗はどんな子を好きになるんだろうと考えた瞬間もあった。