君との恋はセーブができない.
恋のセーブデータ
そんなことばかり考えていたからか
あっという間に終わった、今日。
夕焼けが教室を赤く染め、校舎は放課後の世界へと変わり始めた。
「なゆ」
雪斗はいつもと変わらない声
いつもと変わらない、私の名前を呼ぶ声。
…聞き慣れいるはずの声なのに、いつもはすぐに雪斗の目を見て話せるのに。
「な、なに?」
「なんだよ、ぼーっとして」
苦笑気味に雪斗は私の顔を覗く。
雪斗の隣って、雪斗と2人きりってこんなにもドキドキしてたっけ?自分が自分じゃないみたいに。
「だって……」
あんなこと言われたら、
「なんだよ」
「今まで、ずっと友達だって思ってたから急にあんなこと言われても私は…」
私は、どんな顔して雪斗といればいいのかわからない。友達なのは確か。雪斗に対して抱いているこの気持ちが恋なのかわからない。
ただ1つわかるのは、雪斗の周りがたったの一晩で輝いていること。
「…俺は、なゆと出会った時から友達だなんて思ったことない」
「え…?」
色素の薄い大きな瞳と目が合い、雪斗はくすっと笑う。
その笑顔に不意にも胸が鳴る。
そんな優しく微笑む雪斗を知らない。
「俺は、ずっと必死だった今も」
雪斗と出会ったのは、高校1年生の頃。
雪斗は、高校1年生の夏に転校してきた。“転校生“は、うちの高校では珍しく、うちのクラスを覗きにくる子が多かった。キャーキャー騒いでる子も、無視。雪斗はあまり周りに馴染もうとしなかった。
だけど、
席が隣同士で
雪斗は少しツンとしてて苦手だった。
だけど、月日が経つにつれて
同じゲームが好きだったり、案外優しいところがあったりと自然と仲良くなった。
あの日からずっと私のことを…?
そう思うと急に体が熱くなる。
「なゆが好きなゲーム難しいから…」
「難しいって、ずっとやってたって言ってたじゃん」
「なゆがやってるっていうから…、話せる口実が欲しかっただけ」
まぁでも今はハマっちゃったけど、と言う雪斗の表情があまりにも真っ直ぐで。
…どうしてそんな、真っ直ぐなの。今まで目を逸らしてた私が嫌になるよ。
「少しは俺のこと考えてくれますか」
夕日の光なんかじゃない。
赤く染る雪斗の顔。
そんな顔、今まで見たことがなかった。…どうして今まで、気づけなかったの?
不自然な敬語を使う雪斗が面白くて
「あ、昨日セーブするの忘れた…」
「おい!無視すんなよ」
「セーブさせてよ」
考えてる、この気持ちはきっとあと少しで恋になる。