クズ吸血鬼を拾ったら
目の前で私に話しかけたのは、知らないお兄さん。
……え? でも今、久しぶりって言ったよね。
私のまわりの三人組も、何も言わないし。
私の知り合いーーなのかなぁ。
でもこんな、ほぼ白みたいな金髪で、耳にはピアスがバチバチなイケメン、私、どこで知り合ったんだろう。
ぜーんぜん心当たりないし、もうなんも考えられない。
気持ち悪くて目が回りそう。
お酒なんか飲むんじゃなかった……。
私が何も言わないでいると、お兄さんは、私ににこりと微笑みかけた。
「酔いすぎでしょー、ヒナちゃん。ほら、だいじょーぶ? こっち来なよ」
そう言ってお兄さんは、三人組から私を引き離す。
けど、私の名前はヒナじゃない。咲だ。
やっぱ、人違いしてる……?
お兄さんと目が合うと、ウインクされた。
……あ、もしかして、助けてくれてる?
お兄さん、私と知り合いのふりしてくれてるのかもしれない。
「あ、ありがとう……でも、大丈夫ではないかも……」
「はは、俺が看病してあげる。で、ヒナちゃん、そこの三人は知ってる人?」
「いや、ちがいまーーちがうよ、知らない」
……知り合いのふり、意外と難しい。
「へぇ? じゃあもういいよ、あんたら。どーもね」
お兄さんが、あっちへ行けというふうに手を振ると、三人組はあっさりと去った。
意外だ。お兄さんは一人だし、もっとしつこくされると思った。
「あの、ありがとう、ございます」
「全然いーよ。それよりほんとに看病してあげよっか。顔色ひどいよ?」