クズ吸血鬼を拾ったら
「いや、なーんもしてないよ?」
「よ、よかった……」
ほっと胸を撫で下ろす。
二十歳にしてキスもまだどころか彼氏もいたことないのに、過ちを犯してしまったのかと思った。
「昨日は、ね」
「……ん?」
……なんですか、その含みのある言い方。
そういえばさっき目が覚めたとき、首元がくすぐったかったけど、もしかして。
「……あの、さっき、私になにかしてました?」
「当たり。してましたー」
お兄さんはそう言うと、私の両肩を掴み、押し倒してきた。
「ーーまっ、待って待って! 私、そういうのは嫌でーー」
そういうのは絶対に、好きな人としたいの!
恋人でもないどころか、よく知らない人となんて絶対無理!
「そういうのって?」
「そっ、それはーーんっ……!?」
お兄さんは、私の首筋に舌を這わせ、甘噛みをする。
私は、お兄さんを手で押し退けようとしたが、私の両手はお兄さんの大きな手のひらでひとまとめに掴まれてしまった。
「こういうの、嫌?」
「いっ、嫌! 絶対ダメ!」
「やー、そう言われても。俺もう、我慢できないし」
お兄さんが言ったあと、首筋に小さく痺れるような痛みを感じた。
優しく当てていただけの歯ーーもとい、牙?を突き立てられたような感覚。
……あれ、待って、これって、もしかして。
「お、お兄さんって、人間じゃない……?」
「そーだよ、当たり。……じゃ、いただきます」
ーーお兄さん、もしかしなくても吸血鬼……!