御曹司は離婚予定の契約妻をこの手に堕とす~一途な愛で溶かされました~
 次の日には、葵さんとそろって婚姻届の提出に出向いた。
 無事に受理されて書類上は夫婦になったけれど、まったく実感はない。ただ、今日から彼と一緒に暮らすと思うとさすがに緊張はする。
 まとめた荷物を乗せて、葵さんの運転で彼の暮らすマンションへ向かう。

「さあ、着いた」

「ここ、ですか」

 車を地下の駐車場に止めて、マンションの正面に連れていかれたが、その煌びやかな様子はまるで高級ホテルのようだ。
 促されるままエレベーターに乗り込み、彼の部屋がある三十階で降りる。

「どうぞ」

 玄関を開けてもらい、室内に足を踏み入れた。
 リビングを入った正面はガラス張りになっており、その向こうには都心のビル群が一望できる。夜になれば、贅沢な夜景を楽しめるだろう。
 部屋の中央には、厚みのあるラグが敷かれている。ダークグレーの革張りのソファーは、見るからに座り心地がよさそうだ。

 彼の先導で、室内を見て回る。

「ここが俺の部屋で、そっちが寝室になる。こっちの部屋を瑠衣の私室にしようと思うが、どうだろうか」

 ゲストルームを私の部屋にしてくれたようで、中にはベッドやドレッサーに小ぶりのデスクも置かれていた。
 室内はオフホワイトでまとめられており、居心地がよさそうだ。

「ありがとうございます」

「足りないものは、言ってくれれば手配しておくから」

「いいえ。こんな豪華な部屋を用意してもらって、十分ですから」

 ゲストルームとはいえ、これまで住んでいた部屋よりもかなり上質だ。それに、クローゼットもとにかく広い。
 持ってきた荷物も十分に納められるだろうと思いながら、葵さんに断ってその扉に手をかけた。
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