御曹司は離婚予定の契約妻をこの手に堕とす~一途な愛で溶かされました~
 そのどちらにも共通して関わっていたのが、三浦恵麻という女性社員だ。
 三浦にはことあるごとにつき纏われて、媚を売るあからさまな態度に辟易していた。しかも対象は俺だけにとどまらず、見目のよい者や出世が望まれる優秀社員と広く及ぶ。

 他人に取り入るのが上手く、彼女の甘えた振る舞いや容姿のよさから一部の男性社員の支持を得ているらしい。しかし、それで容易に手助けされてしまうがために、仕事がサッパリできない。
 事態を正確に見られる人間は、決して彼女には仕事を頼まない。そのせいで当然どこかにしわ寄せがいくわけで、成瀬の話を聞く限り彼女がターゲットにされてきたのだろうと思われた。
 これについては、もう少し詳しい状況を把握する必要がありそうだと心に留めておく。

 三浦が成瀬にこだわるのは、彼女に対する嫉妬や妬みが理由なのだろう。見知った人間の交際相手を寝取る理由を考えたとき、そんな答えが導き出された。

 これは、俺が成瀬を手に入れるチャンスだ。
 傷つけられて弱った彼女を目の前にして、こんなふうに食事に誘って話を聞く程度しか慰められないのがもどかしい。
 彼女を抱きしめたい。そうして、泣いていいのだと教えてやりたい。
 欲求は高まるばかりで、気持ちを隠し続けるなどもう無理だった。

 時間をかけて口説いても、別れたばかりの彼女が靡くとは思えない。しつこくすれば、逃げられかねない。

 どうすれば成瀬を手に入れられるか。瞬時に考えを巡らせて提案したのが、契約結婚だった。
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