御曹司は離婚予定の契約妻をこの手に堕とす~一途な愛で溶かされました~
 もちろん、仮初の関係で終わらせるつもりはない。
 今の時点で心は伴っていなくても、夫婦になってしまえばあとは俺に心を向けてくれるように尽くせばいい。

 これまで両親や交際相手から得られなかっただろう分まで、俺がとことん愛して甘やかしてやりたい。そうしてその頑なな心を、こちらに向けさせてみせる。

 お互いにメリットあっての結婚だと強調すれば、突拍子ない提案にもかかわらず成瀬はすんなり納得してくれた。それほどまでに追い詰められていたのだろう。

「瑠衣」

 名前で呼べば、驚いて体を強張らせる。
 少し前まで交際相手がいたのだし、これくらいは慣れているのではないかと内心で首をかしげた。
 嫌がられない程度にそれとなく尋ねれば、別れる前の数カ月は相手から一方的に責められるばかりで、恋人らしい時間を過ごせていなかったという。

 あの男の存在を知ったときは大いに嫉妬したものだが、冷めきった関係だったと知って溜飲が下がる。

 早く、俺に堕ちてくれないだろうか。
 いつにない高揚感を味わいながら、瑠衣にとってこれからの生活が幸せで満たされるように、必要な根回しを進めた。
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