先輩と…
1.出会い
入学して2週間が経った。新しい友達もできてた。高校
生ってなんか凄く楽しい。毎日ワクワクするんだぁ。
放課後、帰ろうと思って校舎を出た時、ふと思い出し
た。
"校舎裏の花壇、凄く綺麗だよ"
昨年度この高校を卒業した私のお兄ちゃんが言ってた言
葉。私は花が好き。見てみたい!そう思って校舎裏に行
く。
「わあっ」
目の前に広がる種々様々な花たちを見て、思わず声をあ
げた。チューリップにハナミズキにラベンダー…ネモフ
ィラまで…!綺麗!
って、先約がいた。少し離れたところにあるベンチに座
り、寝ている男子生徒。
ちょっと待って。…半袖?今日は風が強くて、カーディガンの上にブレザーを着ていても少し肌寒く感じている
のに。
風邪引いちゃう!
慌ててベンチまで行った。大丈夫かな…?
「えっ…」
待って、赤羽先輩だ…。遠くからじゃ分からなかったけ
ど、このピアスにこの骨格。
私はどうしようか一瞬迷ったけど、着ていたブレザーを
そっとかけた。
「…ん」
あっ…やばい、起こしちゃった。
ゆっくりと目を開け、体を起こした赤羽先輩。ど、どう
しよう
「ん?これ、あんたの?」
「えっ…あっ、はい、そうです。…起こしてしまってすみません!」
ブレザーを受け取り、頭を下げる。
「いや、助かった。寝過ごすとこだったから」
「いえ、とんでもありません。先輩は…何で半袖何ですか?いつもはパーカー着てますよね?」
あっ…つい、聞いちゃった。いつも見てます!みたいな
そんなキモイこと、言っちゃった。
…消えたい
けど、先輩は何とも思ってなさそうだった。
「ああ…ジュース零したから。てか、1年なの?先輩って」
先輩が私に話題をふってくらた。ていうか、普通に会話してるけど…。
「そうです」
「名前とクラス」
「1年5組の横川美空です」
「へぇ、頭良いんだ」
そう、5組に入れるのは入試でTOP30に入った人だけ。私も入ってた。中学校時代は部活に入らず、勉強に専念していたから。
「えっ、先輩も5組ですよね?」
「まーね」
先輩は頭が良く、2年生のトップなのだ。容姿端麗で、博識何て、ハイスペック過ぎる。
「ていうか、オレのこと怖くないの?」
じいって見つめられてドキッとした。
「どこがですか?」
「外見とか、無愛想のとことか。よく、怖いって言われるし、そういう目線向けられるから」
「全く思ってません!むしろ、かっこいいです!」
あっ…また、やっちゃった。何回好きな人の前でやらかすんだ、私は。自分で自分に呆れてまった。
「そっか」
「逆に聞きたいんですけど、何でこんなに私とお話してくれるのですか?」
こんなに話してくれる人だとは思っていなかったから、凄く嬉しいけど、同じくらいビックリしてる。
「んー、雰囲気?苦じゃないから」
やった!
「ありがとうございます」
嬉しくて、ついお礼を言ってしまった。
「なんか、横川って面白いね」
そんな真顔で言われても…けど、嬉しい。それに、名前も…。いつか、下の名前で呼んでくれないかなぁ。
「そろそろ帰ろっかな」
そう言って横に置いてあったリュックを肩にかけて立ち上がった先輩。
「先輩、さようなら。お気をつけて」
「いや…横川さえ、良かったら送ってこか?」
えっ何その言い方。
"送ってこか?"
かっ可愛い。
「あっけど、私寮なんですよ。」
そう、学校の横にある寮で生活をしている。せっかくのお誘いだったのになぁ。
「じゃあ一緒に行こ。オレも寮だから」
えっ!そうなんだ。それは初耳だぁ!
そして、寮までの数百メートルを一緒に歩く。下校中の生徒は極わずかだった。正直、助かった。先輩といると目立ってしまうから。
「先輩って優しいですね」
感じていたことをつい、伝えてしまった。
「はっ?」
「だって、寮に住んでいるのにわざわざ送ってくれようとしてくれたところとか…足長いから歩くのもっと速いはずなのに合わせてくれているところとか。先輩が優しいからできることですよね?」
そう言うと、驚いた顔をしている先輩と目が合う。
「えっ、自覚ないんですか?」
少し沈黙が続いたから、聞いてみた。
「ない」
無意識のうちにあーいう行動とれるとか、カッコよすぎる。
「あっオレ、325号室ね。じゃあね」
3階まで上がった時にそう言って、去っていってしまった。
「あっはい。さようなら」
振り向きはしなかったけど、手を振ってくれた。うわぁ…かっこいい!
そのまま私は8階まで上がり、812と書かれたドアを開け、部屋に入る。
男子と女子の寮は隣だけど、今日は共通中央階段を使った。いつもはエレベーターだから、良い運動になったよ。
…また、先輩と話せたらいいな。もっと、仲良くなりたい。…なんて、欲張りすぎるのかな。