トライアングル・ワン

2

 視線の先に二つ並んだ茶色いローファーが玄関の方を向いている。

 教室に着いた後の事を考えると憂鬱だった。

 保健室に運んでくれた人にお礼くらい言わなくちゃ……大丈夫、緊急事態用の飴も持ったし……それに、美香とこのままなんて……。

 いつもより重く感じる玄関のドアノブを押した。


 一人で黙って教室に入り、席に着いて目を閉じた。

 大丈夫……大丈夫……。

 慎重に、ゆっくりと目を開けた。

 一呼吸して、ゆっくり美香の方を向く。

 麻衣子とたのしそうにお喋りしているところが目に入り、ズキッと胸が打たれた。

 きっと何かの間違い……誤解だよ……。

 心の中でつぶやき、前を向いた。


 今日はわりかし落ち着いて授業を聞く事が出来た。

 お昼休みになって一日を振り返ってみると、やはりクラスのみんなが何かよそよそしい。

 いや少なくとも女子達は昨日の出来事について、何かを敏感に感じ取ったのだろうと思った。

 今日も一人でお弁当を広げた。

 美香の方を見ると、麻衣子と一緒にいる。

 これからも、ずっとこうなのかなぁ……。

 箸をウインナーにプツッと刺した。


 午後の授業も終り、今朝の心配をよそに、無事一日を終える事が出来た。

 帰ろうと思い教室を出ると、行こうとした方から美香と麻衣子が歩いてくるのが見えた。

 咄嗟に方向転換し、迂回して校舎を出る事にした。

 さすがに無言ですれ違うのは悲しすぎる。そんな事があれば、もう決定的に何かが終ってしまいそうだと思った。
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