キミとの恋がドラマチックなんて聞いてない!
――十一月二十一日。昼休みの渡り廊下。
生徒たちがまばらに声で賑やかせてる中、私と波瑠は自販機でジュースを購入してから教室へ戻ってる最中に中庭で楽しそうにランチしている星河と櫻坂さんを発見した。波瑠は窓の向こうに目線を下ろして二人を眺めながら呟いた。
「あの二人、ほんっとラブラブだよねぇ〜。授業中以外いつも一緒にいるし」
「……一緒にいるからラブラブとは限らないよ」
最近波瑠が口を開けば星河たちの話をしてるように思えて、無意識に可愛げのない返事をしていた。
確かに顔を合わせればお互い減らず口をたたいたりするけど、星河は幼なじみ……、いや、存在が近すぎてほぼ親友だから。つまり、いまは彼女ができてから学校で話す時間すら減っているから、それが少し物足りなく思っていた。
すると、波瑠はにやにやしながら言った。
「ほぅほぅ、それってヤキモチでは?」
「はああっ?! 私がヤキモチなんて!! 星河なんて興味ない!!」
「それさ、何度も聞いてるけど口癖になってない? ん〜まぁ……、顔、普通。体型、普通。性格、普通、勉強、平均より下。女らしさ、足りない。将来の夢、ない。……そうだよね、あんたじゃ勝ち目ないか。はぁぁ〜」
「ちょっと待ったぁぁあ! どうして私の胸を見てため息つくの? 確かに大きくないけど……さ」
思わず目線が胸にストンと降りた。確かに推定Dカップの櫻坂さんと比べるとボリュームが足りない。でも、胸だけが女の価値じゃない。いやっ!! それ以前にヤキモチとか関係ないし。
胸の大きさなんてもっと関係ないし! ……ってか、先日櫻坂さんは星河に看護師になりたいって言ってた。ちゃんと自分の夢を持ってるということは、私は普通に全部負けてない?!
「あっはっは! 見てない見てない〜」
「こらっ! 見てた! ……ってか、勝つとか負ける以前の問題だから」
「へぇ~、本当に?」
「本当に!」
波瑠の言う通り、二人はクラス公認のカップルだ。
少し前までは私が身近な存在だったのに。でも、いまは自然と櫻坂さんに気を使ってしまっているせいか、校内で星河と喋る機会も減った。バイト先では普通に喋ってるけど、忙しいからなんか物足りないというか……。幼なじみの歳月が長かった分、二人がどこへ居ても気になってしまう。
――この時の私は、星河と櫻坂さんのことで頭がいっぱいになっていた。
しかしこの直後、そんな私に最低かつ最高な出来事が訪れて運命が大きく狂わされていく。