星のような僕らは

秘密にしてた

雨が止み、傘を閉じて、歩き続ける。
「ここ、登るぞ」
目の前には、神社があって、階段が数メートルほど、続いている。
その神社は、何処か、見覚えがあった。
「行けるか」
「うん」
そして、神社の階段を登っていく。
「着いた」
階段を登った先は、どこにでもありそうな普通のお社だった。
「ここ、普通の神社だよね?」
「こっち」
蒼也が私の手を取って、引っ張る。
「俺のとっておきの場所に連れてってやる」
「うん」
お社の後ろに周ると分かれ道があり、左を進む。
「どこまで行くの?」
「もう少し」
歩いている道は、森が広がっていて、人が通っている気配は、ほとんど、無かった。
「久しぶりだからな。どうなってるだろう」
「蒼也の思い出の場所?」
「まあな。俺だけじゃないけど」
「気になる」
「焦るな。もうすぐ、着く」
「分かった」
私が頷くと蒼也が繋いでいる手を強く、握り返してきた。私もぎゅっと握り返す。
そして、突然、蒼也が立ち止まる。
「うわあ」
私は、蒼也の肩にぶつかって、体のバランスを崩してしまう。
「危なかった」
でも、咄嗟に蒼也が抱き止めてくれた。
「大丈夫か」
「うん。ありがとう」
「ああ。俺も悪かった。急に立ち止まって」
そして、もう一度、手を繋ぐ。
「離すなよ」
「離さない」
私は、手を握り返した。
そして、蒼也も手を握り返して、その温もりを噛み締める。
しばらくして、蒼也が口を開く。
「梨歌」
「何?」
「来たかった場所、着いた」
「ここ?」
「ああ。目の前にある、小屋だよ」
確かに目の前に古い小屋がある。
この小屋もどこか、見覚えがあった。
「蒼也、ここって、私、来た事、あるのかな」
「ああ。梨歌は、来た事、あるよ。ここは、俺と梨歌が出会った場所だから」
「えっ」
「ごめん。ずっと、秘密にしてた」
秘密にしてた、って、なんだろう。
「でも、私、ここ、来たの、初めてだよ?」
「梨歌は、一度、この街に住んでたけど、引っ越して、また、戻ってきたんだ」
「なんで、分かるの?」
「だから、俺とお前が小さい頃、ここで遊んでたから」
「私と蒼也が?」
「ああ。正確には、俺と梨歌と兄さんで一緒に居たんだ。何年も会ってなくて、お互い、気づかなかったみたいだったけど」
「うん」
「急にお前が引っ越す事になって、別れて、それっきりだった。だけど、高校で初めて会ったとき、俺は、気づいたぜ」
「私、全然、気づいてなかった。それ以前に、蒼也と明斗さんの事も覚えて無かった」
「まあ、俺達が最後に会ったのは、小学一年の時だし」
「最後の引っ越しは、こっちに戻ってきた時で、中学三年の時だから、十年も空いてる」
「記憶も十年したら、薄れててもしょうがない」
「だけど、私、蒼也と会ったことあるの、分からなかったのが、嫌だ!」
「兄さんも覚えて無かったし、俺も秘密にしてたから、おあいこだ。俺も話すか、最近まで、悩んでたんだからな」
「なんで?」
「兄さんが梨歌を分かっなかったようで、分かってるところがあったから」
あっ...。
「もしかして、蒼也が音楽を初めるきっかけになった女の子って」
「ああ。梨歌だ」
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