星のような僕らは
夏の大三角

転校生

梅雨が過ぎて、七月に入った。本格的に文化祭に向けて、練習をしながら、ステージの案をまとめる毎日だ。
そして、文化部にとって、大敵の一日がもうすぐ、やってくる。
「体育祭、嫌だ!」
そう、体育祭だ。
「楽器が出来るなら、大丈夫だ」
「音楽の体力と運動の体力は、全く、別なの!」
私は、登校中、今日も蒼也に体育祭への文句を言っていた。
「蒼也は、体育祭、嫌じゃないの?」
「嫌だけど、俺が出る競技は、借り物競争と騎馬戦だからな。どちらかと言うと、騎馬戦は、苦手だから、やりたくなかったけど、くじで、負けた」
「それは、しょうがないね」
「ああ。そう言う、梨歌は、何に出るんだ?」
「私は、台風の目と四百メートルリレー。二つとも、くじ、はずれたんだ」
「練習、やってる時、本番もだけど、特に、台風の目で体調、悪くなったら、すぐ、休むんだぞ」
「うん、ありがとう」
話しているうちに、学校に着いた。
教室に入ると、少し、違和感があった。
「机の位置がずれてる」
「本当だ。俺の机の場所、梨歌の隣になってる」
「本当!?」
「ああ。そこが梨歌の机だろ。で、ここが俺の机だから」
「やった!...でも、席替えでは、無いよね」
「そうだな。全員、座れば、分かるだろ」
蒼也は、もう、気づいてるみたいだけど、何故か、教えてくれなかった。
そして、チャイムが鳴る。
朝休みで、校舎や他の教室を出入りしていたクラスメイトが教室に戻ってきて、それぞれの机に座っていく。
「あっ、蒼也、私の隣、一個、空いてる」
私の右隣の席には、蒼也が居て、左の席が空席だった。
「そうだな」
「という事は」
担任の先生が入ってくる。
「おはよう。今日は、遅刻と欠席は、居ないな」
その後ろから、一人の男の子が着いてきていた。
「おはようございます」
「今日から、転校して、このクラスに入る、佐々波翼(ささなみ つばさ)だ」
やっぱり、転校生だ!
「佐々波翼です。よろしくお願いします」
「席は、藍空の隣、あそこだ」
「はい」
返事をすると、空席だった、私の隣に座った。
「藍空さん、よろしく」
「うん、こちらこそ、よろしくね。困った事があったら、何でも、聞いて!」
「ありがと」
その返事と共に、佐々波君は、笑った。
無邪気な笑顔だと思うと同時に、何故か、何か、ありそうだと、感じた。
「えっと」
「藍空さん、面白いね」
「...面白い?」
「うん。面白いよ」
佐々波君は、また、笑う。
「佐々波、梨歌」
反対側から、蒼也が話しかけてきた。
「ホームルーム、やるからな」
と蒼也は、笑ったと思いたいが、目が笑ってない。もしかして、蒼也...。
「うん、ありがとう」
「そうだね」
さっきの笑顔は、何処へ行ったのか、佐々波君は、元の無表情に戻り、こちらに笑いかけている蒼也と一瞬だけ、見つめて、前を向く。
すると、蒼也も前を向いた。
「それじゃあ、ホームルームを始める」
私は、ホームルームが終わると蒼也に、話しかけた。
「蒼也」
「何だよ」
うっ、やっぱり、怒ってる。
「一限目、美術だから、移動、一緒に行こ」
すると、蒼也は、少し、ぽかんとなって、はっとなる。
「ああ」
良かった。いつもの蒼也だ。
「藍空さん」
「佐々波君、どうしたの?」
「俺、美術室の場所、分からないから、一緒に来てくれない?」
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