地獄に落ちた女王様
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出勤時、更衣室は鬼たちで賑わっていた。
基本的には着物で出勤するが、地獄の部門によっては人間が持つ鬼のイメージに近い衣装に着替えている。
文官はたいてい着物のままで、現場の鬼は虎柄のパンツや鹿革の衣装を身につける場合が多かった。
「今度の新人、すごいらしいね」
赤鬼が隣の青鬼に言った。
「そうなんだよ、入った直後からビシバシムチをふるってさあ」
新人を任された青鬼の獄卒が着替えながら答える。
「普通は他人にムチを振るうってためらうよなあ」
「そうそう。なのに迷いなくムチ打つんだぜ」
「大型新人だな」
「閻魔大王が直接スカウトしたらしい」
「それだけ優秀な人材ってことか」
赤鬼が感心して答える。
「ただ、気になることもあってさ」
青鬼はロッカーの小さな鏡を見て衣装のずれを直した。
「なにが?」
「罪人たちは罰を受けてるわけじゃん? なのに、新人のムチをご褒美だとか言って喜んでるんだよな」
「なにそれ怖い」
赤鬼は奇妙な現象に震えた。
***
麗妃は今日も元気にムチを振るう。
「ほほほほほ! 私のことは女王様……じゃない、獄卒様とお呼び!」
赤いボンテージを着た彼女の高笑いが、地獄に響き渡った。
終