ハルとミモザ
私の集中力は扉の開く音とともに切れた。
「生徒は登校禁止。そう言ったよな、羽留」
「慎ちゃん!」
慎ちゃんに会えた嬉しさのあまり、私は慎ちゃんに抱きついた。
「離せ。誰かに見られたらどうする」
慎ちゃんは顔をしかめながら私を押しのけた。
「みんな昼休憩でしょ?誰も来ないよ」
「そういうことじゃねぇっていつも言ってるだろ?学校とか家とか関係なく、俺に抱きつくの禁止なんだよ」
「なんで?良いでしょ別に。家が隣同士なんだから」
「そんなの関係ねぇって。俺と羽留は先生と生徒。それ以外なんでもないんだよ」
慎ちゃんは迷惑そうに小さく溜め息をついた。
もっと本気で嫌がってくれたら私だって諦めて抱きつかないのに。
慎ちゃんは優しいから本気では突き放さない。
そういうところも好きだ。
「13時からまた会議始まるから、その間にちゃんと帰れよ」
「はーい。それより慎ちゃん、お昼ご飯もう食べた?」
「コンビニのおにぎり1つなら食ったよ」
「良かった、じゃあまだ入るね。はい!私特製おにぎり!」
そう言って私は鞄からおにぎりを2個取り出し、慎ちゃんに渡した。