大切なひと~強引ドクターは最愛の人をあきらめない~


大好きなロサンゼルス飛び立ってから、十数時間。飛行機は成田空港に着陸した。

(久しぶりの日本だ)

燈生が空港から真っすぐに向かった先は、父が院長を務める坂野(ばんの)総合病院だ。
都内でも有数の規模の病院で、特に外科に力を入れている。

彼の父、坂野親斉(ちかなり)は野心家として知られている。
貧しい家に生まれ、自分の力だけで医者になった親斉は政治力にも長けていた。
数多(あまた)いたライバルを蹴散(けち)らして坂野総合病院のひとり娘倫子(ともこ)の婿となり、病院長の座を掌中におさめるほどに。

燈生は父親とは医師として目指すものが違うというか、相容れない性格だ。

医学部には自分の意志で進んだが、父と違って名誉とか財産とかにはいっさい執着心がない。
医師免許を取得しても父が固執する坂野総合病院に縛られることなく、ロサンゼルスの大学病院へ研究留学した。
そして向こうの医師免許試験を受けて合格し、最新の外科技術を学び続けてきた。

父の望む道を避けたのは、彼が親斉の血は引いているが倫子ではなく愛人が産んだ子だからかもしれない。

腐心して坂野総合病院のひとり娘と結婚したあとで、親斉は学生時代の恋人と再会し、愛人関係になった。
それが燈生の母、高峰真理恵(たかみねまりえ)だ。



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