大切なひと~強引ドクターは最愛の人をあきらめない~



翌日は坂野総合病院で手術を担当する日だった。

明日香と陸が気になりながら、燈生は午前中は外来の診察、午後は弁膜症手術の予定だ。

(無事に終われば大学病院へ行って明日香と陸に会える)

そう思ってオペに集中した。
何事もなく終わったら、そろそろ日が沈みかける時間だった。
すぐに出かけようとした時、救急車で胸部大動脈瘤の患者が坂野総合病院へ搬送されてきた。
大動脈瘤が破裂したら、命にかかわる。
すぐにも対応しなければならなくて、また燈生は青いオペ着に着替えた。

陸の検査結果も気になるが、目の前の患者を救うことも燈生にとって大事なことだ。
燈生は医師だ。小走りにオペ室に向かった。




***



大動脈瘤手術後の患者が落ち着いたのを確認できたのは、翌朝になってからだった。
ほとんど睡眠もとらず、燈生は大学病院に向かった。

運転しながらも、明日香はもう検査結果を聞いただろうか、陸の退院の許可は出ただろうかとあれこれ考える。
燈生の見立てでは、おそらく生まれつき心臓にごく小さな穴があったのだろう。
それが自然に塞がったのではないかと思われてた。

駐車場に車を停めて、病棟に向かって走り出した。

胸騒ぎがしてならない。
明日香は自分と再会しても、嬉しそうではなかった。
なにか思いつめた表情だった。

また明日香を失ったらと思うと、取り返しがつかないミスを犯したようでたまらない。

病棟に着くなり、陸の病室まで行くより先に看護師に声をかける。

「小田陸くんはもう退院したのかな?」

「はい。先ほど手続きされました」




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