私を処刑したら、困るのは殿下ですが……本当によろしいのですか?【コミカライズ進行中】
4 テオドール卿の告白
テオドール卿が割られた小鍋の破片を拾いだしたので、ソフィアは慌てて声をかけた。
「テオドール卿! 手を怪我してしまいますわ。箒など使ってくださいませ」
「……箒を使ったら、他のゴミと混ざってしまう」
「構いませんわ。もう直すこともできませんし、小鍋は他にも持っておりますから。それよりも、薬剤が残っているかもしれませんし、直接触るのは危険です……!」
「直せなくとも、これはあなたにとって大事な物なのでしょう?」
「え……?」
ソフィアが驚いて動きを止めると、下を向いていたテオドール卿が顔を上げてソフィアを見つめた。
真っ直ぐなその視線に、ソフィアは自分の心臓がドキッと大きく弾んだのがわかった。
「……なぜ、その鍋が私の大事な物だとご存知なのですか?」
「勘です」
「勘……」
ただの直感だったと堂々と言うテオドール卿を見て、ソフィアはふふっと微笑んだ。
その笑顔を見て、無表情のテオドール卿の頬が薄っすらと赤らんだことには気づいていない。