私を処刑したら、困るのは殿下ですが……本当によろしいのですか?【コミカライズ進行中】
「怖くて黙っておりましたが、私が殿下の恋人になった頃からずっと……ひどいことを言われたり、押し倒されたり、ドレスを破られたこともありました」
「ああ……! なんて可哀想なエイリーン!」
安物の舞台を観ているようで、ソフィアは抱き合う2人を見てゾゾッと鳥肌が立った。
演技に見えるのは、彼女の言っていることが完全なる嘘だからである。
エイリーンの名前すら知らなかったソフィアは、そもそも彼女と会ったことがなかったのだから。
(どうしましょう。彼女は虚言癖があるのかしら? それとも、幻覚が見えている病気?)
「あの、私はエイリーン様とはお会いしたことがありませんので、人違いではないでしょうか? それに、嫉妬とはなぜ……」
「ここまで言われても、まだ己の非を認めないとは! お前がこの俺に心を寄せていることなど、俺もエイリーンもすでに気づいているのだ!」
「ソフィア様! 王子の恋人になった私が羨ましくて、嫉妬したから私を虐めてきたのでしょう!?」
王子と一緒になって、泣き叫ぶように抗議してくるエイリーン。周りにいる使用人や騎士達も、みんな軽蔑したような視線をソフィアに送っている。
それでもソフィアは焦ることなく、冷静に2人の様子を観察していた。