私を処刑したら、困るのは殿下ですが……本当によろしいのですか?【コミカライズ進行中】
ソフィアの姿を見たテオドール卿は、兵士を再度説得し牢から離れさせていた。
兵士がいなくなったのを確認し、テオドール卿がゆっくりと近づいてくる。
顔はいつも通りどんな感情なのかが全く読めない無表情だ。
「……救護室にあなたがいなかった。ここにいると聞いて、驚いた」
ボソッと呟いたテオドール卿の声には、どこか焦りの色が混ざっている。
いつも落ち着いた声しか聞いたことのなかったソフィアは、少し驚きながらも彼に問いかけた。
「救護室に行かれたのですか? 今日もどこかお怪我を?」
そう言いながらテオドール卿の顔や腕をジロジロと見て、手の甲に切り傷があるのに気づいた。
救護室に行ったはずなのに、その傷は手当てをされたようには見えない。
「まあ。今日は手の甲を……。手当てはされなかったのですか? なぜこちらに……」
「あなたは、ご自分が捕まっているというのになぜ他人の心配を?」
「えっ?」
ソフィアはキョトンとした顔でテオドール卿を見つめ返す。
騎士というよりも王子のような繊細な顔。
その涼しげな目元からは、どこか怒りのようなオーラが出ているような気がした。