私を処刑したら、困るのは殿下ですが……本当によろしいのですか?【コミカライズ進行中】
3 壊された小鍋
投獄2日目。
牢に入れられて丸1日が過ぎた昼に、アーサー王子と2人の宮廷薬剤師がソフィアの元を訪れた。
王子の連れてきた薬剤師たちは、どちらもここ1年以内に入ってきた新人である。
ソフィアはあまり関わりのない新人がなぜここに来たのかという疑問よりも、気になることがあった。
それは、その新人が持っている小鍋である。
使い古された丸い壺のような、薬剤を作る際に使う小鍋。
それはまさしくソフィアの物であった。
「どうだ。ソフィア・シェルハント。己の罪を認める気になったか?」
アーサー王子は腕を組み、半笑いの顔で問いかけてきた。
王子からは見えない位置に立っているテオドール卿が、暗殺者のような怖い顔で王子を睨みつけている。
「罪も何も、私は毒など作っておりません。室長に確認はしていただけましたか?」
「ああ。もちろん室長は否定した。お前と同じく、あれは薬だと言っていた」
「でしたら……」
ソフィアがホッとして王子を見ると、なぜか王子の口元がさらに怪しい笑みに変わる。
嬉しくてたまらないといった顔だ。