あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
「二度とそんなことを言うな。お前の存在に俺がどれほど救われているか。祓魔の一族は、俺が滅亡させてやりたいくらいだが、琴禰という存在を生み出した唯一の功績により生かしてやる」

 一族を庇ったつもりが、火に油を注いでしまったらしい。

 煉魁は怒りながらも、必死で琴禰を励まそうとしているのが伝わってくる。

「煉魁しゃま、ひたいです(煉魁様、痛いです)」

 両手で顔を中央に寄せられた琴禰は、変な顔になっていた。

「ハハハ、すまん、すまん」

 煉魁は笑いながら琴禰の頭をなでた。

(もう、子供扱いして)

 深刻に重くなっていた空気が和らぐ。煉魁なりの気遣いだろうか。

(私は、煉魁様が思うような尊い存在ではない)

 忌むべき存在だと自分でも思う。

 生まれてきてはいけなかったのだと本気で思っている。

(こんな優しく素晴らしい方を、私は騙している)

 こんなに罪深いことをしていて、自分の存在を許せるわけがない。

 でも、もし、嘘を真実に変えることができたなら。

(私が、彼を殺そうとしなければ何も起こらない)
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