あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
三百年生きているというのに、この若々しさ。一体何年生きるのだろう。

「私だけあっという間によぼよぼのおばあちゃんになるのですね」

 想像するだけで悲しい。介護されてしまうのだろうか。

「いや、あやかしの国にいれば琴禰も同じ時を生きられる。人間界では桜は枯れるが、あやかしの国では枯れない。そういう土地なのだろう」

 それを聞いて安心した。

 と、同時にそんなに長い時間を生きていけることが不思議でたまらない。

「永遠に一緒にいよう」

 煉魁は琴禰を胸に抱いて囁いた。

「……はい」

 騙すための嘘を、真実に変えよう。

 きっと大丈夫。

 あっという間に人間の寿命は尽き、血の契約は失効される。

 そうすれば、何もなかったことにできる。

(死にかけの私を煉魁様が救い、そして二人は恋に落ち結婚した。ただそれだけのこと)

 永遠に煉魁を愛し抜く。そうすれば、罪は消える。

 琴禰はそう願っていた。

 しかしながら、現実は甘くなかった。穏やかな日常は、唐突に終わりを告げる。
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