あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
 あやかしの国を探索し、弱点はどこなのか探るために動き回っているそうだ。

 あんな人の良い笑顔を浮かべて、あやかしの方々にも好意的に受け入れられているのに、澄八の腹の中は、あやかしを滅亡させることしか考えていない。

 罪悪感は湧かないのだろうかと琴禰は思うが、澄八は祓魔や人間界のために行動しているので、悪いことをしているつもりなどさらさらない。

 琴禰もずっと、あやかしは人間界に厄災を振り落とす邪悪なものだと思っていた。

 それが真実であり、常識であり、疑う余地もないことだと信じてきた。

(何が正しいの? 私こそが、厄災?)

 気が重くなりながら、煉魁の宮殿へと向かう。

 煉魁は仕事に行ったかと思いきや、宮殿の中で琴禰を待っていてくれたようだ。

 ソワソワと落ち着きなく室内を歩いていた煉魁は、琴禰が帰ってくると嬉しそうに顔を綻ばせた。

「おかえり、琴禰。どうした? 顔色が悪いが」

「大丈夫です。ちょっと、昔のことを思い出してしまっただけなので」
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