あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
「そうか、侍女に茶と菓子を持ってこさせよう。甘い物を食べれば気分も和らぐだろう」

 煉魁の優しさに、胸が苦しくなる。

 嘘ばかりついている。自分はなんて酷い女なのだと自分のことがどんどん嫌いになっていく。

 あやかしの国の方々も、祓魔一族や人間界も、全てに嘘をついている。

 一番の極悪人は自分なのかもしれない。

(忌み子、祓魔を滅亡させる者、生まれてきてはいけなかった存在)

 どうして周りは自分をこんなに虐げるのだろうと思ってきた。

 何も悪いことをしていないのに。どうして殺されなければいけないのか。

 でも、今なら少し分かる。

 琴禰の存在自体が凶事なのだ。

「大丈夫か、琴禰。闇に引きずり込まれるな」

 煉魁は琴禰を強く抱きしめた。

 ハッと我に返る。

 煉魁の温もりに包まれると、気分が和らぎ、息が深く吸える。

 全てが辛い。自分の置かれている環境が苦しくて堪らない。

 今が一番幸せなはずなのに、幸せであればあるほど琴禰を苦しめる。

 まるで、『お前は幸せになってはいけないのだ』と誰かに言われているようで。
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