あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
「じゃあ、明日決行して」

「でも……」

「言い訳はやめろ!」

 澄八に怒鳴られて、恐怖に慄いた琴禰の肩が上がる。

「僕はもう帰らないといけない。あやかし王の首を祓魔への土産として持って帰りたい」

煉魁の首を持って高笑いをする澄八の姿を想像し、心の奥底まで冷えびえする思いだった。

(そんなこと絶対にさせない)

「善処しますが、あやかし王は勘がとても鋭く、私が不穏な動きをすると起きてしまうのです」

琴禰の嘘に、澄八は不敵な笑みを浮かべながら、琴禰の白磁のような滑らかな頬に指を這わせた。

「あやかし王の隣ですやすやと寝ている琴禰の力を、僕が強制的に発動させたらどうなるかな?」

 あまりに恐ろしい言葉に、琴禰は目を剥く。くすぶる熾火のような怒りが体を熱くさせる。

「あやかし王に重傷を負わせることができるだろう。それに、あの無駄に絢爛豪華な宮中も吹っ飛び、多くのあやかし達は死ぬ。これは祓魔の歴史の中でも大健闘だ。やる価値は大いにある」

「つまり、私に死ねと?」
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