あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
 部屋に戻った琴禰は、寝ている自分の姿をした式神を紙に戻し、布団の中に入った。

 心身共に疲れ切っていて、精神は過敏になっているものの目を閉じれば泥のように眠ってしまいそうだ。

 今後の動きを考えると少しでも体を休めておいた方がいい。

 澄八が、あやかしの国にいる間はまだ大丈夫。琴禰は気を失うように眠り込んだ。

 目が覚めると夕方になっていた。

 驚くほど寝てしまったようだ。けれど、おかげで体はだいぶ良くなっていた。

 起き上がって部屋から出ると、扶久が駆け寄ってきた。

「起きたのですね! お体は大丈夫ですか?」

「うん、だいぶ良くなったみたい」

 扶久がほっとしたような笑みを見せる。

 扶久とはすっかり仲良くなった。日本人形のように表情が乏しく怖い印象だった扶久だけれど、話してみると案外気さくで面白い。

 友達のいなかった琴禰にとっては、初めてできた友人のように感じていた。

 しかし、もう離れなければいけない。

「湯殿に入りたいわ」

「はい、今すぐ準備しますね!」
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