あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
 琴禰の胸は引き裂かれそうになるほど痛かった。

 しかし、煉魁も同じように痛かった。いや、琴禰以上に衝撃的で苦しかった。

「あいつはもう人間界に帰った」

「はい。ですから私も、人間界に帰ろうと思います」

 そうくるとは思わなかった。
 昨夜、二人が逢引きしていたのは、人間界に戻って一緒になる約束をしていたのかもしれない。だから急に、こんな……。

「人間界に戻ったら寿命が短いのだぞ? ここにいた方がいいだろう。ここなら何でもある」

「でも、人間界は私の故郷です」

「殺されかけたのだろう? そんなところに戻っても、また傷付くだけじゃないか!」

 煉魁は悲痛な面持ちで声を荒げた。

「澄八さんが、私を守ってくださいます」

 煉魁は言葉を失った。

 命が短くなろうとも、再び虐げられるとしても、それでも澄八の元に行きたいというのは。

(それほどあいつが好きか)

 やはり、種族の壁は越えられないのだろうか。

 幸せだったのは、愛し合っていると思っていたのは、自分だけだったのだろうか。
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