あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
(何をやっているのだ?)

 煉魁は気配を消して大きな屋敷の外に降り立つ。

 中では数十人の村人が一堂に会していた。集落の中で一番大きな屋敷とはいえ、あやかしの御殿ほどの大きさはないので、人々はぎゅうぎゅう詰めで座っていた。

 部屋の一段高くなった上座には、老輩の女性が鎮座している。

 そして、その側には腕に包帯を巻いた澄八が神妙に座っていた。

(なんだ、あいつ。降り立つのに失敗して怪我したのか。間抜けな奴だ)

 恋敵の不運に溜飲が下がる。

 何を話しているのか耳を澄ませると、琴禰と自分に関することだったので、心臓が大きく脈打った。

「琴禰が裏切ったというのは本当か!」

 紺色の着物を羽織った男が野次を投げるように言った。

「はい。琴禰は、あやかし王と結婚していました。最初は血の契約を遂行するためだと思ったのですが、どうやら本気で恋に落ちてしまったようです」

 澄八の言葉に、煉魁は眉を顰める。

(裏切り? 血の契約? 琴禰は澄八と駆け落ちするのではないのか?)
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