あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される

血の契約と祓魔の闇

なんとか結界を破って外に出ようとしていた琴禰はクタクタになり座り込んでいた。

(どうすればいいのだろう。いつ力が発動されてもおかしくないのに)

 焦燥感が増すが、力が発動される気配はない。

 澄八はもう人間界に降り立ったはずなのに、おかしい。

(裏切りに気づかれた今、私を生かしておく理由なんてないのに。むしろ、早々に始末しておきたいはず)

 澄八の考えがわからない。先延ばしされればされるほど、悪い方向に進んでいるような気がして怖かった。

 そんな時、遠くに行ったのか気配のしなかった煉魁が、宮殿に戻ってきた。

(煉魁様! 私に近付かないで!)

 琴禰は強く願ったが、煉魁は迷うことなく寝室に入って来た。

「お待たせ、琴禰」

 煉魁はとても優しい声で言った。琴禰を労わる気持ちが感じられて、再び涙が溢れてくる。

「近寄らないでください!」

 琴禰は自分の体を抱きしめ、大きな声で叫んだ。

「もう大丈夫だ。澄八は俺が拘束した」

「え?」

 涙を流しながら、顔を上げる。煉魁は慈しむような眼差しで琴禰に近付いてきた。

「血の契約は発動されない。もう恐れなくていいのだ」
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