あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
 どうして澄八は力を発動させなかったのか理由がわかったけれど、体を動かせないようにしてきたとはどういうことなのだろう。

「腕を拘束してきたのですか?」

「いや、念のため手足も動けなくさせてきた。まあ口は動くので餓死することはないだろう」

 なかなか非道な行いだ。つまり、澄八は一生寝たきりの状態になったということだ。

「だからもう、恐れることはない。安心して俺の側にいろ」

 にわかには信じがたいことだが、力の発動がされないということが、煉魁の言葉が真実であるという何よりの裏付けだ。

 琴禰は体から力が抜けていくのを感じた。

「煉魁様、嘘をついていてごめんなさい」

「何を言う。一番辛かったのは琴禰だろ?」

 煉魁の言葉に、琴禰の目から温かな涙が零れ落ちる。

「離縁してくださいって言ってごめんなさい」

「うん、もう二度と言うなよ」

 離縁に関しては煉魁も相当まいったらしく、苦笑いしていた。

 琴禰を心から大切に思っていることが伝わってくる。

「お側にいてもいいのですか?」

 琴禰は潤んだ瞳で煉魁の顔を見上げる。

「ああ、一生側にいろ」

 煉魁は琴禰の唇を奪うように口付けした。
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