あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
 ―― 人間界。

手足がまったく動けなくなった澄八は、灰神楽家に運ばれ、布団に寝かされていた。

 絶望の淵の中で、澄八は諦めてはいなかった。

 不幸中の幸いか、頭と口は動く。起死回生の一手はないかと思考を巡らす。

 そして桃子は、寝たきりとなってしまった婚約者を見捨てなかった。

 我儘で見栄っ張りな桃子の性格上、寝たきりとなってしまった男など早々に捨てるかと思いきや、優しく介抱する姿を見て、両親たちは胸を痛めながらも感心していた。

 昔から桃子には甘かった両親なので、澄八が寝たきりとなってしまっても、桃子がそれでも一緒になりたいと言うなら受け入れてやろうと話していたほどだ。

「澄八さん、お粥を持ってきました」

 お盆の上に、小さな土鍋と取り皿と匙を載せ、桃子は部屋に入ってきた。

 顔は動かせるので、横に向ける。

「桃子が作ったのか?」

「いえ、お手伝いさんが作ったものです」

「そうか、それならいただこう」
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