あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
 以前、桃子が作ったものを食べて大変な思いをしたことが澄八は、桃子の料理を警戒している。

 桃子も料理は大嫌いなので、『もう作らなくていいよ』と澄八に言われて、ほっとしていた。

 桃子は畳の上にお盆を載せると、粥を取り皿によそい、フーフーと息を吹きかけた。

 そして澄八の上半身を起こし、背中を壁にもたれかけさせて、痛くないように壁と腰の間に毛布をいれてやる。

 これだけで大変な重労働だ。桃子は額にうっすら汗をかきながら、冷ました粥を匙に掬って、澄八の口に入れる。

「熱くはないですか?」

「うん、ちょうどいい」

 桃子は安堵の笑みを漏らすと、再び粥に息を吹きかけた。

(桃子にこんな面があるとは、意外だな)

 家事能力皆無で、贅沢好きな我儘娘。

 正直にいって、結婚にはあまり乗り気ではなかったけれど、こんな体となってしまった今、選り好みしている場合じゃない。

(桃子を俺の手足として使い、血の契約の失効方法を調べさせるか)
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