あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
まさかこんなことになるとは思ってもみなかった。

 絶対的に優位な立場にいたはずなのに、少しの不運で形勢逆転された。

 まだ力が完全に回復していなかったのに、焦って人間界に戻ったのがいけなかった。

 落ちた時に手を骨折していなければ、今頃琴禰は暴発し、あやかし国に甚大な被害をもたらすことができたのだ。

(おのれ、あやかし王、絶対に許さない。だが、あの強大な力。葬り去ることができないなら、手下となり人間界の頂点に僕が君臨するのも悪くない)

 澄八は口の端を歪め、腹黒い笑みを浮かべた。

 その時だった。

 屋敷の外で何やら言い争いになっている複数の声がした。

「どうしたのかしら」

 桃子は立ち上がり、外の様子を見に行こうとして襖に手をかけた。

『ぎゃー!』

 まるで断末魔のような悲鳴が聞こえた。

「お母親の声だわ!」

「待て!」

 桃子は声のする方に駆け出して行きそうだったので、澄八が止める。

「何が起きているのかわからない。桃子は僕を抱えて裏口から逃げろ」

「私一人ではとても……」
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