あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される

あやかし王を殺せ

大巫女様の詫宣により、琴禰は結界の張られた地下の折檻部屋に拘禁された。

 広さは四畳ほどの狭く小さな牢屋のような場所だ。

 無能で虐げられていたので、結界を張られるのは初めてだ。扉の格子には厄除けの護符が何十枚も張られ、触れると火傷してしまうほど強固な祓魔の術が施されている。

 無能でも虐げられ、力を開花させても畏怖され。自分はつくづく嫌われ者だなとため息を吐いた。

(それにしても、私が一族を滅亡に導くなんてありえない。大巫女様の予言は絶対だけれど、今回ばかりは外れに決まっているわ)

 自動車を持ち上げてしまったのは、火事場の馬鹿力というやつで、たまたまだ。一族を滅亡するほどの力があるとは思えないし、そもそもそんな恐ろしいことをする理由がない。

 長年虐げられてきたとはいえ、どんなことがあっても人を傷つけるようなことはしたくない。

(私に力が芽生えるなんて……)
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