あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
 倒れるように煉魁の胸に顔を押しつけた。このまま死んでしまいたかった。

 すると、煉魁の胸から、トクントクンと心臓が動く音がした。

「え?」

 涙で濡れた顔を上げる。

 すると、煉魁の指先がピクリと動いた。

「煉魁様? 煉魁様!」

 琴禰の呼びかけに反応するかのように、煉魁の瞼が小刻みに動き、そしてゆっくりと瞼が上がった。

「琴禰? 良かった、生きている」

 煉魁は、琴禰を瞳に映すと、わずかに微笑んだ。

「それは私の台詞です、煉魁様」

 琴禰は泣きながら煉魁に抱きついた。

 悲しみの涙から一転して、喜びの涙が溢れだす。煉魁の温もりを感じると、急に心が軽くなり、安らいでいく。

(煉魁様、煉魁様、煉魁様)

 心の中で何度も愛しい方の名前を呼ぶ。

 ようやく、まともに息が吸える気がする。

 幸福感でいっぱいになり、生きていてくれたことに感謝した。

煉魁は自力で上半身を起こし、胸の中で声を上げて泣く琴禰をそっと抱きしめた。

琴禰を守ることができて良かったと、まずは安堵した。

 そして煉魁は顔を上げると、村の惨状を見渡した。
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