あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
暴発する琴禰の力を抑えるように手は尽くしたが、それでも被害は甚大で、村は一面焼け野原だった。

 まばらに点在する横たわる人々は死体だろうか。

 煉魁は琴禰だけでなく、命ある者を救おうと力を使った。

 しかし、さすがに救うことはできなかったかと心を痛めていると、黒く炭となり横たわった大木の影から、ひょっこりと小さな生き物が現れた。

 しっぽを傘の柄のように立てながら近付いてくると、琴禰の足に体をこすりつけてきた。

「きゃっ!」

 びっくりした琴禰が顔を上げると、「ニャー」と目を細めて呼びかける。

「茶々! 無事だったのね!」

 琴禰は茶々を持ち上げると、もふもふの体に顔を沈めた。

「なんだ、その生き物は」

 煉魁は、眉を寄せ不審なものを見るように目を細めた。

「猫ですよ。そういえば、あやかしの国では猫を見ませんでしたね。初めて見るのですか?」

「いや、あやかしにも動物はいるが、宮中にはいないからな」

「ああ、なるほど。そうだ! 茶々をあやかしの国に連れて行ってもいいですか⁉」

「え」

 煉魁は明らかに嫌そうな顔を見せるも、琴禰は嬉しさに興奮して気付かない。
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