あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される

ほのぼの後日談

前代未聞のあやかし王と人間との結婚の儀は、それは盛大に行われた。

 宮中の最奥にある大きな神殿の中で、琴禰は白の綺羅裳(きらも)を纏っていた。

髪には翡翠(ひすい)瑪瑙(めのう)の玉飾りが垂れ飾られ、顔の周りでちらちらと揺れている。

そして、琴禰の隣で佇む、豪奢な漆黒の羽織袴を着こなした煉魁は、一幅の絵のように麗しい姿だった。

 厳かな雰囲気の中で儀式は行われ、終わると国民向けの祝賀御礼の一般参賀が興行された。

 美しい人間の花嫁を一目見ようと、各地からお祝いに駆けつけた大勢のあやかしが集った。

 当初は結婚に反対されていたのが嘘のように、あやかし国はお祝いの空気で溢れていた。

 あやかし達の大歓声を浴びると、琴禰は緊張した面持ちで手を振った。

(幸せすぎて怖いくらい)

 不安気に煉魁を横目で見ると、煉魁は慣れた様子で歓声に応えている。

 琴禰の視線に気が付いた煉魁は、優しく微笑んだ。

『大丈夫だ、自信を持て』と目で言われた気がして、琴禰は背筋をピンと張った。

(大丈夫、私は幸せになっていい。煉魁様が側にいる)

 琴禰は不器用ながらも笑顔を見せる。すると、歓声が一際大きく上がった。
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