あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
 煉魁はその場に胡坐をかき、風呂敷を広げた。中には重箱があり、蓋を開けると美味しそうなおはぎが並べられていた。

「おぉ、美味そうだ!」

 煉魁の目が輝く。

「食べていいか?」

「はい。お口に合えばいいのですが……」

 謙遜する琴禰だが、料理の腕前は、あやかしの料理人も唸るほどのものだ。一口頬張ると、上品な餡子の甘味と柔らかなもち米の風味が絶品だった。

「美味い!」

 煉魁は声を張り上げて言った。

「ああ、良かったです」

 琴禰もほっと安堵した。

「こんな美味しい差し入れを持ってきてくれる嫁がいる俺は幸せ者だなぁ」

 煉魁はしみじみと呟く。

(こんな美しい夫を持つ私も幸せ者です)

 琴禰は心の中で拝むように言った。煉魁の美しさは、まさに人外の美しさ。神々しすぎて拝んでしまう。

 琴禰も煉魁の隣にちょこんと腰を下ろした。

「今日はどのくらいで帰ってこられますか?」

「訓練が終わったら帰れるぞ。それとも、もう切り上げて一緒に帰るか?」
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