あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
「ああ、すみません。何から何まで、本当にありがとうございます」
あやかし王は、部屋から出ていて良かったと安堵した。もしもその場にいたら、軽蔑の眼差しを受けたのは、侍女からではなく人間からだったかもしれないと思うと肝が冷えた。
「腹は減ってないか? すぐに持ってこさせる」
「いえ、そんな。これ以上ご迷惑はかけられません」
「迷惑ではない。俺がしてやりたいのだ」
あやかし王が強い言い方で押し切るので、琴禰は頷いた。
「それでは、ご厚意を有難く頂戴いたします。ただ、まだ体が丈夫ではないので、食べられるか……」
「なるほど。では粥にしよう。待っておれ、すぐに持ってこさせる」
あやかし王は立ち上がって部屋から出て行った。
一人になった琴禰は、ゆっくりと部屋を見渡した。
一面、檜造りの部屋には最高級の畳が敷かれており、広さは二十畳ほどか。部屋の奥には花鳥風月が描かれた襖があるので、ただの寝所にしては広いし豪華だ。
壁や柱には精巧な細工が施されており、黒漆の螺鈿細工が随所に見られる重厚な造りで、物は少ないながらも簡素さを感じさせない。
あやかし王は、部屋から出ていて良かったと安堵した。もしもその場にいたら、軽蔑の眼差しを受けたのは、侍女からではなく人間からだったかもしれないと思うと肝が冷えた。
「腹は減ってないか? すぐに持ってこさせる」
「いえ、そんな。これ以上ご迷惑はかけられません」
「迷惑ではない。俺がしてやりたいのだ」
あやかし王が強い言い方で押し切るので、琴禰は頷いた。
「それでは、ご厚意を有難く頂戴いたします。ただ、まだ体が丈夫ではないので、食べられるか……」
「なるほど。では粥にしよう。待っておれ、すぐに持ってこさせる」
あやかし王は立ち上がって部屋から出て行った。
一人になった琴禰は、ゆっくりと部屋を見渡した。
一面、檜造りの部屋には最高級の畳が敷かれており、広さは二十畳ほどか。部屋の奥には花鳥風月が描かれた襖があるので、ただの寝所にしては広いし豪華だ。
壁や柱には精巧な細工が施されており、黒漆の螺鈿細工が随所に見られる重厚な造りで、物は少ないながらも簡素さを感じさせない。