あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
さらっと告げられた言葉に、間の抜けた言葉が口から零れ落ち、驚きを通り越して頭が真っ白になる。

「これが恋という感情なのだろうな。うん、きっとそうだ」

 煉魁は自分で言って、自分で納得したようで、うんうんと満足そうに頷いた。

(まさか、そんなことはあり得ない)

 思わぬ形で告白を受けた琴禰だったが、素直に信じることができるほど自分に自信がなかった。

 誰かも愛されず、憎まれ続けてきた人生だった。

 それなのに、急に誰かに愛してもらえるはずがない。

「俺は琴禰のことが好きなようだ。琴禰は? 俺が好きか?」

煉魁は屈託のない、弾けるような笑顔で言った。恥ずかしさや緊張といった様子もなく言ってくる様子に、己に多大な自信があるのだということが垣間見られる。

 俺が好きなら、相手も当然俺のことが好きだろうといった自信だ。

 琴禰には全く備わっていない感情だ。自信を裏付けるだけの根拠もある。

 こんな美しい男性を拒絶する女性などいないだろう。顔だけでない、地位も権力も何もかも持っている。
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