あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される

二人だけの結婚式

静寂が二人を包み込んだ。

 琴禰は真っ直ぐに煉魁を見つめ、煉魁も目を逸らさずに驚きの目で琴禰を見つめている。

 煉魁の大きな喉仏の鳴る音が、静かな部屋に響いた。

「その意味を分かって言っているのか?」

 煉魁が眼差しを強くして琴禰に問う。

「はい」

 琴禰は強い意思で答えたが、煉魁が問うている意味を本当の意味では分かってはいなかった。

 煉魁は薄く微笑み、魅惑的な眼差しを向けた。

「良かろう。俺の嫁にしてやる」

 ぐいと引き寄せられ、煉魁の胸板に琴禰の頭が当たった。上衣から漂う白檀(びゃくだん)()をかいだ時、ようやく煉魁が言わんとした意味を知る。

 琴禰を抱きしめ、煉魁は満足そうだ。

「あ、あの……」

「なんだ?」

 抱きしめられるのが初めての琴禰は、鼓動が早鐘を鳴らすように強く打ち続けている。

 本能的な恐れに、身を引きそうになる気持ちをぐっと堪えた。

「い、いえ。何でもありません」

 結婚してくれと頼んだのは琴禰だ。

 夫婦が抱き合うのは自然なことだと必死で自分に言い聞かせる。

 顎を指先で持ち上げられ、煉魁と視線が交じり合った琴禰は気まずさに視線を泳がせた。

「お前はもう、俺のものだ。いいな?」

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