あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
見下ろす視線に、有無を言わせぬ威圧感がある。獰猛な獣の間合いに入ってしまった小動物のように、琴禰は運命を受け入れた。

「はい」

 すると、唇を奪うような激しい口付けが落とされた。

 全てが初めての連続に、琴禰の頭は真っ白になる。

 拒むことなんてできようもない。煉魁に嫌悪感を抱いているわけでもない。

 ただ、純粋に怖かった。

 全身を強張らせ、瞼を固く閉じて、時が過ぎるのを待つしかないと諦めにも似た覚悟を決めた時だった。

 永遠に続くかのように思われた口付けが離された。

「この先は、結婚してからにしよう」

 煉魁は琴禰を放した。

「お楽しみは、俺が約束をきちんと守る男だと証明してからだ」

 悪戯小僧のような純真な瞳を輝かせながら煉魁は笑った。
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