あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
ポッと頬を染める琴禰に、煉魁の大きな手が頭に乗り、優しくなでられた。

「まだ病み上がりだからな。ゆっくり休め」

 そう言って煉魁は部屋から出て行った。

 怒涛のような展開に、気持ちが追い付かない。

『結婚してくれ』と頼んだのは琴禰だ。でも、純粋な気持ちからの言葉ではない。

 結婚して琴禰に気を許すようになれば倒せる機会もやってくるかもしれないという打算からだ。

 煉魁の優しい笑顔を思い出すと胸が痛い。

 騙しているのが心苦しくて、甘い喜びに浸ることもできない。琴禰の心はすでに煉魁に囚われていた。出会った瞬間から惹かれていたことに気付く。

(私は一体、どうしたら……)

 両手で顔を隠し、罪悪感に押しつぶされそうになりながら一夜を過ごした。
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