あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
すっかり機嫌の悪くなった煉魁は、そのまま春秋の間から出て行ってしまった。

 怒り心頭の煉魁に話しかけられる者はいない。

 ドスドスと音を立てながら渡殿を歩く。

(どうして反対する。誰でもいいって言ったじゃないか)

 人間だからという理由で反対されるとは思ってもみなかった。

 あやかしの中に渦巻く差別感情は、煉魁が思っているよりも深いようだった。

とはいえ、煉魁の中で反対されたからといって結婚を諦めるという選択はまるでない。

 国中のあやかし達から反対されようが、結婚する。約束を守りたいからという律儀な気持ちからではない。煉魁が琴禰と結婚したいからだ。

 琴禰という存在を知ってしまった以上、他の者と結婚する未来なんて考えられない。

(さて、どうするか)

 煉魁は足を止め、園庭に咲く見事な一本桜を見て、ニヤリと笑った。
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