あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
あやかし王が人間と結婚するつもりらしいという噂は、あっという間に宮中に広まった。

 あやかし王の異常な執心ぶりから、まさかと思っていた侍女たちは青ざめた。

 しかし、誰もあやかし王を止めることはできない。

 人間を追い出すなんてまねをしたら、怒りに狂った王が何をしでかすか想像しただけでもゾっとする。

 あやかし王の力は強大だった。特に、煉魁の力は歴代あやかし王の中でも特に際立っている。

 あやかし王の決定に逆らえる者などいない。

 しかしながら、これまであやかし王が無茶苦茶な決定を下したことはなかった。

 暴君であったが、それ以上に名君として敬われていた。とても賢く、弱き者にも情が厚い、やる時はやる男なのだ。

 だからこそ、今回の決定は、皆が頭を抱えた。

 そんなことになっているとは露ほども知らない琴禰は、まだ体力が万全ではないため、よく眠っていた。

 扶久も当然、あやかし王の結婚の噂は聞いていたが、一切顔に出さず、献身的に尽くしていた。

 扶久にとっては正直、どうでもいいことなのだ。主人が誰と結婚しようがしまいが、己の仕事を忠実にするだけである。

 そして、煉魁はついに動いた。
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