あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
 琴禰と結婚の約束をしてから数日後。琴禰を外に連れ出した。

『あやかしの国を案内する』と煉魁から言われた琴禰は、深く考えず喜んで付いていった。

 白地の正絹で作られた着物には、薄桃色の刺繍が織り込まれている。

こんなに綺麗な着物は見たことがなく、琴禰のお気に入りだった。

 溺愛されていた妹の桃子ですら持っていない上等な着物を与えられ、恐縮する気持ちもあるが、やはり嬉しかった。

 煉魁の隣をしずしずと歩く琴禰を遠巻きに見つめる宮中のあやかし達。

 煉魁の怒りを買ったら大変なので、表立って反対はできない。

『人間なんて』と見下す気持ちもあるが、煉魁の隣に立っている琴禰があまりにも美しかったので、複雑な心境だった。

 二人が並んでいる姿は、あまりにもお似合いすぎて、まるで昔からずっと一緒だったかのような親しい雰囲気が醸し出されている。

 互いに目が合うと嬉しそうに微笑み合う姿は、見ているだけで感嘆のため息が漏れるほど絵になっていた。
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