あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
「え、今、ここで、ですか?」

「嫌か?」

「いえ……とても素敵です」

 琴禰は笑顔で煉魁を見上げた。

 こんな綺麗な場所で結婚式が挙げられたら、一生の思い出になるだろう。

「式というよりも、二人しかいないから結婚の誓いだな」

 結婚の誓い。本当に煉魁と結婚することになるのだと思うと緊張してくる。

「あやかしの国では、どうやって結婚するのですか?」

「互いに指輪をつけ合う」

「指輪? それだけですか?」

「だが、その時に術を掛け合う。それが結婚の誓いだ。指輪から力が発生し、夫婦となったことが誰の目から見ても明らかとなる」

「つまり、結婚したら離縁することはできないということですか?」

「嫌なことを聞くな。離縁はできる。どちらかが指輪を外せば誓いは解かれる」

「なんだか、あっさりしていますね」

 琴禰は少しがっかりして言った。血の契約のことは頭にあるけれど、純粋に煉魁と結婚できることが嬉しくもあるのだ。

 いつの間にか、煉魁に惹かれていた。お慕いする相手と結婚できることに浮足だっている。

「いや、指輪をつけてみれば分かる。結婚の誓いがいかに重いものかということが」
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